オーガニック・スキンケア技術の開発と、地域起こしの起業家:スカーレット西村氏の創造性とリーダーシップ

「美容と健康」という永遠のテーマに、一主婦が本物志向で取組み、起業するに至る創造性とリーダーシップとは。

「創造的な経営」に関する面接調査結果
面接者:橋本壽之(記)

回答者:スカーレット西村
美容師免許、着物コンサルタント資格をはじめ各種美容関係のディプロマを取得、美容全般に関する知識、経験を豊富に持つ。米国2年、英国5年半の海外生活での経験を踏まえて、帰国後独自の本物志向のスキンケア技術を確立。五島列島久賀島に自生する藪椿から作った純粋な「カメリヤオイル“CAMELLIA OIL”」(椿油)を製造販売する㈱Scarlett(スカーレット)の代表取締役を務める。カメリヤオイル(椿油)を通じ、五島列島の地域起こしを支援。短歌結社『波濤』同人、「倫敦スカーレットの会」主宰、日本歌人クラブ会員、横浜ペンクラブ会員、平塚ロータリークラブ会員。http://www.sn-beauty.com/

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1. 御社における「創造的な経営」について
1.1 その概要をお知らせ下さい。
<それまでと異なる、新規性、革新性、創造性について>
農薬、化学肥料とは無縁のオーガニックやぶ椿の種子からなる椿油(カメリアオイル)を、化学精製を一切排除しながらも、その欠点であった、べた付き感や油臭さという従来のイメージを一新して基礎化粧品とした。
そのカメリアオイルで行う独自の美容法を「カメリアオイル美容法」として新しいスキンケア技術を開発した。

一方スカルプソープも、安全性にこだわり、合成界面活性剤・合成ポリマーを入れず、しかも石鹸シャンプーにはない軋まない美しい髪の洗い上がりを可能にした。

1.2 それは、どのようにして起こりましたか。
1.2.1 あなた、あるいはそれを主導された方について
<創造に至る動機やきっかけ等>
・ 教えて欲しいと頼まれて自宅で美容全般についてのサロン教室を開いた。このとき、化粧が合わないケースに遭遇して勉強を始め、皮脂の乾きを補えば化粧品は不要ではないかとの結論に達した。オリーブ・オイルはオリーブの実から採られるため光合成の働きがありシミを作る原因となり、「椿油」がよいことが判明した。
・ 多くの市販の椿油は、人体への影響が不安な石油系合成化合物が含まれ、輸入品の中には椿科の一種で安価なサザンカから採った油をつかう物があることが判明したため、不妊など子供達の健康を考えて天然の椿油を探した。出身地が長崎であることから、五島列島の椿生産の総元締めとの縁を得て、純粋な椿油を入手できるようになった。椿油は大島が有名であるが、生産量は五島列島が凌駕し、しかも五島列島は椿栽培での地域起こしに力を入れている。生徒数は20人しかいないのに、椿の総元締めからは、独自のブランドを作ることを勧められ、個人的に一斗缶単位で原油を購入し、「粒子が細かい」もの(日焼け防止や肌荒れ防止用)と、「粒子が粗い」もの(化粧落としや、髪につけたりマッサージに使うべとつかない)、の2種類を精製してもらった。これまでの石油系合成化合物を混入した椿油の先入観を払拭するため、更に将来は輸出して日本の産業にすることを念頭に置いて、「カメリヤオイル“CAMELLIA OIL”」という名前で発売することにした。

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<創造性を生む源泉>
・ 歌人でおしゃれで仕事もしていた母親と、資生堂に勤めていた2番目の姉の影響を受け、子供の頃から「美容」に関心があった。
・歌人で仕事もこなしながらいつも美しかった母親と、私が子供の頃からおしゃれであることに理解があった父親の影響が大きかったと思う。
・ 大学在学中は、ダブルスクールで美容師、着物コンサルタント、メークアップ・アーティスト等の免許を取得し、結婚後は子供3人を連れて主人のアメリカ留学(MBA取得目的)のため2年間アメリカに滞在したが、その時はnailスクールに通った。その後の5年半の英国生活でも、アロマ、オイル・マッサージ、リンパージュなどのdiplomatを取得し、日本大使館から着物の着付け指導などを頼まれた。歌の会も主催し人脈があった。


1.2.2 職場や社会との関わりについて:
<促進要因>
・ 子育てが終わってゆとりができた時点で、主催する短歌の会を通じて知己を得た桐本美智子さんの紹介で、ロータリークラブに入会したことが弾みとなった。全くの主婦でビジネスの知識は皆無であったが、ロータリーでお近づきになった会員の方々のアドバイスや支援で会社組織にする決心がついた。2008年11月に(株)Scarlettを設立して現在に至っている。
・ 利益本位ではなく、五島列島の島おこしに役立つとか・・社会貢献への夢も広がっている。
・ また「美会」と名付けた現在のサロン教室の生徒たちの将来の受け皿になれるように、事業拡張も願っている。
・ 五島列島の椿生産者から、椿油を使った美容法に関する講習会を依頼され、生産者との親密な交流ができるようになった。
・ 本物の「カメリヤオイル“CAMELLIA OIL”」は非常に高価なので、宣伝費をかける大手化粧品メーカーでは採算が合わないし、スキンケア技術を持つ優位性があるので、大手の進出は恐れていない。

<阻害要因>
・ 資金不足。借りれば良いかも知れないが、出資者の意向に左右されて自分の理想追求が難しくなることを避けるため、独力でやっていきたい。
・ Amazonの通販サイトを使った販売を行っているが、手売から本格的に販路拡大することが目下の課題。

1.3自然や芸術への関心について
<あなたは、自然の神秘や芸術の美しさに感動を覚えたり、親しまれたことはありますか>
佐世保で育ち、九十九島の美しい夕暮れは私の原風景となっている。また結婚後は海外を旅することが多く、アフリカで見た塩湖の夜明けの感動は忘れられない。

芸術に関しては、海外在住中に一流の絵画、音楽に接する機会が多くあり学ぶ時間にも恵まれた。特に印象派の絵画についてはその画家たちの足跡をたどる旅を、今も時間を見つけては続けている。
<自然や芸術に対する感性は、創造的なことをする動機や感動を高める効果があると思いますか> 
・海外生活ではたくさんのインプレッションも受け、歌作にも反映できたと思うし、美しさへの探求心も深まったと思う。
・一流のものには一流たる由縁があり、その作品に触れ合うことにより審美眼も育っていくはずである。

そこからでなくては他を惹きつける創造性は生まれないし、アトラクティブではない創造性は意味をなさないと思っている。


2.「創造的な経営者」を育成するためには
一般的にどのようなことを、心がけるべきだとお考えですか。
<教え、励ます等の直接的支援>
・根本的には、後を引き継ぐものはこの仕事に愛情を持って取り組んでくれなければならない。
・女優をしている娘は私の良き理解者であり実践者でもある。いつか彼女がこの仕事を継いでくれることを密かに願っている。
<職場環境作り等の間接的支援>
・購買力がある若い人々の中でもLOHASが受け入れられ、またビール酵母のかすを肥料として栽培するなど、社会は元々あったものを受け入れる復古、ナチュラルなオーガニック志向に向かっているので、「カメリヤオイル“CAMELLIA OIL”」の取組みは社会に受け入れられていく、と思っている。なぜなら、米国やドイツといった先進国の化粧品売り場では、既にこの傾向が顕著であり、いずれ我が国でもそうなるに違いないと思うからである。
・何が何でも自然な物でなければならない、という原理主義者ではない。化粧を直折肌に接する「基礎部分」はナチュラルで化学的異物を入れないものを、その上のメークアップ用品は、人工的でも楽しくなるカラーを自由に使って良い、という自由で柔軟な化粧のあり方を推進していきたいと考えている。