原文 1

リーダーシップとは

3.1リーダーシップを発揮したのは誰か?

A) おばさんのリーダーシップ

Hそのおばさんのリーダーシップってすごいね!

 

T:おばさんのリーダーシップですって?

おばさんは、文字通り普通のおばさんですよ。特に何かの地位についている訳でもないし、第一何もA君に命令したわけではないですよ。ちっともリーダーシップなんて発揮していないんじゃないですか?

 

H:リーダーシップというのはねぇ、必ずしも偉い地位についた人が大きな声で号令をかけるものとは限らないのだよ。リーダーシップというのは、「人に影響を与えること」だ。この場合は、お地蔵さんにお水を供えるということを、言葉ではなく行動でA君や子供たちに示したわけだよね。それでA君は見よう見まねで一生懸命お地蔵さんにお水をお供えした、こんな立派なリーダーシップってないよ。しかも、そのおばさんはAに影響を与えた、という意識さえ無かった。

 

T:そうか、リーダーシップとは、「人に影響を与えること」ことなのですか。

H:では、国や会社のトップでも、その人の言う事を誰も聞かないとすれば、「人に影響を与える」ことにはならないので、その人は高い地位にあっても決してリーダーシップを発揮しているとは言えない訳だよ。

Tそうか、リーダーシップというのはそういうものですか。てっきり、偉い人が上から目線で人々を従えることかと誤解していました。

 

H昔から親の背中を見て育つ、と言うよね、これは親が言葉ではなく行動で子供に影響を与える、これも立派なリーダーシップだよ。必ずしも言葉でなくてよい、影響を与えられることが重要なんだよ。

B)お天道さまのリーダーシップ

昔からお天道さまが見ているから悪いことをしてはいけない、と言われて育った人も多いと思う。これもお天道さまが子供たちに悪いことをしないように影響を与えているとすると、お天道さまもリーダーシップを発揮していると言える。

T:お天道さまのリーダーシップって、すごくメルヘンでロマンチックですねー!

 

Hでは、おばさんがA君に影響を与えたリーダーシップで、一番大事なことは何だと思う?

3.2リーダーにとって大事なこと:一貫性

T:一番大事なことですか?難しいですね。

Hそれは一貫性があることだよ。そのおばさんが、もしお地蔵さんにお水をお供えしたり、しなかったりで、ちゃらんぽらんだったとしたら、A君が真剣になって真似しようとしたかどうか疑わしいよね。

 

T:リーダーにとって大事なことは一貫性ですか。そう言えば、前の上司は、頭はよく声は大きいし、いつも陣頭指揮をとってリーダーシップを発揮しているように見えました。けれど、朝令暮改でしょっちゅう言うことが変わるので、部下たちは見かけは命令に従うふりをしても、心の中ではいつ変わるか分からないと半信半疑で、誰もついて行こうとしませんでした。一貫性がないと、リーダーシップがあるとは言えないこと、納得しました。

 

H:そのおばさんにとっては、お地蔵さんは、良いことがあっても悪いことがあっても、いつも優しく見守ってくれる、この一貫性がおばさんにとってはお地蔵さん信仰の原点かもしれないね。

 

T:ありがとうございます。

なるほど、ですね。

 

 

3.3平時のリーダーと有事のリーダー

ふだんお地蔵さんにお水を備えることを教えてくれたおばさんはリーダーだと話したね。では、水に落ちて死ぬ目に逢った時に行動を起こしてAの命を救うという決定的な影響力を発揮したのもそのおばさんだったかね?

T いや違います。普段話をしたこともない怖い顔をしたおじさんでした。

H そうだね。日頃は敬遠して口も利かないおじさんが、Aを海から助け上げて病院まで連れて行ってくれた。まさに命の恩人。この人が助けてくれなかったら、Aは死んでいたかもしれない。おばさんが平時のリーダーだとすると、おじさんは有事のリーダーだったと言える。この例のように、リーダーは常に一定の人に固定されたものではなく、状況によりダイナミックに変わり得るものだよ。では、おじさんのリーダーシップの特徴は何だと思う。

T有事のリーダーシップ。

Hそれは今僕が言ったことだ、ずるいぞ。

T 何も言わずにAを助ける、という不言実行。

H それもあるけど、無償の愛だよ。

無償の愛

普通だったら、お礼を求めないにしろ、恩に着せる一言を言っても不思議ではない。ところが、そのおじさんは、何かを求めるどころか、お礼を言っても、「ああ」というだけで、おまけに当時はまだ高級だったバナナまでくれた。このように命を助けるという大変な行動をしても、その見返りを求めないで相手のために尽くす愛を「無償の愛」と言う。ここで、もしお礼を求めたり、恩に着せたりする言葉を浴びせたとしたら、恐らくAのおじさんに対するお礼の気持ちは帳消しになったに違いない。でも、現実にはそうならなかったところに、Aのおじさんに対する強いお礼の気持ちが醸成されたに違いない。

更に、その奥には、何も物も言わず、手足を動かすこともなく、ただ微笑むだけのお地蔵様の存在があり、Aにとっては、あのおじさんはお地蔵様の化身に違いない、とまで思うようなお地蔵様に対する厚い信仰が芽生えることになる。

 

改定文1

 

H この物語で、心に響くものがあるとしたら、それは何ですか?

 

 

M やはり、

・普段当たり前のようにお地蔵さまに手をあわせていたおばさんの影響で、自然とお地蔵さまに芽生えていた子供の感謝の心

 

 

・怖いと思っていたおじさんに命を救われて変化した子供の心

などでしょうか

 

 

H やはりそこですか

A) おばさんのリーダーシップ

Hそのおばさんのリーダーシップってすごいね!

 

T:おばさんのリーダーシップですって?

おばさんは、文字通り普通のおばさんですよ。特に何かの地位についている訳でもないし、第一何もA君に命令したわけではないですよ。ちっともリーダーシップなんて発揮していないんじゃないですか?

 

H:普段当たり前のようにお地蔵さまに手をあわせていたおばさん。 

この名も無きおばさんは、何も説教する訳ではなくひたむきにお地蔵様にお水を供え手を合わせるだけの素朴なことしかしていないのですが、ワルガキAの心に響くものがあったからこそ、Aは水を供え、願いごとをするようになったのでしょう。

つまり、おばさんは、「Aの心を動かし、Aの人生を変えるような大きなインパクトを与えた」ことになります。このように、「人の心を動かし、行動を促すことを、リーダーシップ」と言います。ですから、リーダーシップというのはねぇ、必ずしも偉い地位についた人が大きな声で号令をかけるものとは限らないのだよ。この場合は、お地蔵さんにお水を供えるということを、言葉ではなく行動でA君や子供たちに示したわけだよね。それでA君は見よう見まねで一生懸命お地蔵さんにお水をお供えした、こんな立派なリーダーシップってないよ。でも、そのおばさんはAに影響を与えた、という意識さえ無かった。

 

 

T:そうか、リーダーシップとは、「人の心を動かし、行動を促すこと]なのですか。

 

H:では、国や会社のトップでも、その人の言う事を誰も聞かないとすれば、「人に影響を与える」ことにはならないので、その人は高い地位にあっても決してリーダーシップを発揮しているとは言えない訳だよ。

Tそうか、リーダーシップというのはそういうものですか。てっきり、偉い人が上から目線で人々を従えることかと誤解していました。

 

 

H 昔から親の背中を見て育つ、と言うよね、これは親が言葉ではなく行動で子供に影響を与える、これも立派なリーダーシップだよ。必ずしも言葉でなくてよい、人の心を動かし、行動を促すことが重要なんだよ。

 

T リーダーシップって、社会生活をするうえで重要なことなんですね。

 

 

B)怖いと思っていたおじさんのリーダーシップ 

 H こわいおじさんのリーダーシップについてどう思う?

M やはり、「人の心を動かし、行動を促すこと」ですか?

H  いや、この場合は「人の心を動かし、、、」と言った悠長なことを言っている場合ではない。一刻も早く溺れかかったAを助けなければならない、自らの危険を顧みずに海に飛び込んで?Aを助けた。リーダーシップには、この場合のように、「率先して行動を起こす」こともあるのだよ。

 

火傷と言う風貌ゆえに、普段は誰からも相手にされることなく避けられて来たおじさんですが、Aが海に落ちて溺れそうになった時、命を救った。わたことにより感謝の心が子供の心に芽生えた。

人は見た目で判断してはいけません。

 

命を助けるように人助けをする人は、古今東西誰、人に愛され、その人の言動は人々の心を動かし行動を促すことでしょう。

 

逆に、昔から「巧言令色少なし仁」と言います、巧言令色の人は本質を見抜かれて誰からも相手にされなくなる

 

平時のリーダーと有事のリーダー

ふだんお地蔵さんにお水を備えることを教えてくれたおばさんはリーダーだと話したね。では、水に落ちて死ぬ目に逢った時に行動を起こしてAの命を救うという決定的な影響力を発揮したのもそのおばさんだったかね?

T いや違います。普段話をしたこともない怖い顔をしたおじさんでした。

H そうだね。日頃は敬遠して口も利かないおじさんが、Aを海から助け上げて病院まで連れて行ってくれた。まさに命の恩人。この人が助けてくれなかったら、Aは死んでいたかもしれない。おばさんが平時のリーダーだとすると、おじさんは有事のリーダーだったと言える。この例のように、リーダーは常に一定の人に固定されたものではなく、状況によりダイナミックに変わり得るものだよ。では、おじさんのリーダーシップの特徴は何だと思う。

T有事のリーダーシップ。

Hそれは今僕が言ったことだ、ずるいぞ。

T 何も言わずにAを助ける、という不言実行。

H それもあるけど、無償の愛だよ。

無償の愛

普通だったら、お礼を求めないにしろ、恩に着せる一言を言っても不思議ではない。ところが、そのおじさんは、何かを求めるどころか、お礼を言っても、「ああ」というだけで、おまけに当時はまだ高級だったバナナまでくれた。このように命を助けるという大変な行動をしても、その見返りを求めないで相手のために尽くす愛を「無償の愛」と言う。ここで、もしお礼を求めたり、恩に着せたりする言葉を浴びせたとしたら、恐らくAのおじさんに対するお礼の気持ちは帳消しになったに違いない。でも、現実にはそうならなかったところに、Aのおじさんに対する強いお礼の気持ちが醸成されたに違いない。

更に、その奥には、何も物も言わず、手足を動かすこともなく、ただ微笑むだけのお地蔵様の存在があり、Aにとっては、あのおじさんはお地蔵様の化身に違いない、とまで思うようなお地蔵様に対する厚い信仰が芽生えることになる。

 

 

 

H リーダーシップについては、もう一つ気を付けなければならないことがあります。

 

例えば、学校では先生は皆を分け隔てなく平等に扱わなければならない、ですね。これは、皆を同一水準で横一列に同等に並べることとは違います。皆、能力や経験、スキルも異なるわけだから、皆がそれぞれ特徴を生かして成長出来るようにそれぞれに合った対応をするのが正しい教育です。

 

 

2人とも別に偉い訳でも権力がある訳ではありませんが、人は心に響くものがあれば自然に従うことが分かります

 

逆に、偉くて権力がある人の言うことでも心に響くものが無ければ、人は聞こうとしないのでは?

あるいは、たとえ聞いたとしても、保身のため致し方なく従う振りをするのでは。

人ではなくその人の地位に従うだけのことでしょう

 

もしその人がその地位を離れたら、全く無視されるのでは

  人の心を動かし何か行動を起こさせる人とは、このおばさんとおじさんのような人ばかりではないですね。

 

組織に入ると、その人の言うことをよく聞くと褒められる、逆に聞かないと怒られる、つまり「アメとムチ」の利害が絡む場合があります。

 

両者の違いは、前者は長続きするのに反し、後者は条件が変わると効力がなくなる、つまり長続きしないことです。

組織の中でも、「アメとムチ」の利害で人を動かす人は言うことは聞いても尊敬されませんが、人間的にも心服できるような人は尊敬されたとえその職場を離れても、その関係は長続きします。我々もこうありたいものです。

疑問、質問、体験等ありませんか

 

 

M リーダーシップというのは、通常皆をグイグイ引っ張っていくような人のイメージですが、人を動かすのは、確かにそういう人だけとは限りませんね。

静かに自分の成すべきことを淡々と行っているが、その行為がいつの間にかまわりの人の心に多大な影響を与えている場合もありますね。

 

はっきりとリーダーシップを発揮した助けたおじさんと、お地蔵様にいつも手を合わせて、自分では気がつかないようなリーダーシップを発揮しているおばさんのように。

 

何かをしようと自ら促したり誘ったりするわけではなく、その行為そのものがリーダーシップを発揮している、そういうリーダーシップを学びました。

それこそとても素晴らしいようにも感じます。

 

H 私の理論先行だと難しくなるので、睦美さんの素朴な疑問や質問に答える形にしたいと思います

 

M え、もう完璧ではないでしょうか。お話よくわかります。

あとはメルヘンぽくというところでしょうか・・

 

H いやいや、理論の列挙で自然なストーリーの流れになっていませんので、頭を悩ましているところです

 

 

Hでは、おばさんがA君に影響を与えたリーダーシップで、一番大事なことは何だと思う?

3.2リーダーにとって大事なこと:一貫性

T:一番大事なことですか?難しいですね。

Hそれは一貫性があることだよ。そのおばさんが、もしお地蔵さんにお水をお供えしたり、しなかったりで、ちゃらんぽらんだったとしたら、A君が真剣になって真似しようとしたかどうか疑わしいよね。

 

T:リーダーにとって大事なことは一貫性ですか。そう言えば、前の上司は、頭はよく声は大きいし、いつも陣頭指揮をとってリーダーシップを発揮しているように見えました。けれど、朝令暮改でしょっちゅう言うことが変わるので、部下たちは見かけは命令に従うふりをしても、心の中ではいつ変わるか分からないと半信半疑で、誰もついて行こうとしませんでした。一貫性がないと、リーダーシップがあるとは言えないこと、納得しました。

 

H:そのおばさんにとっては、お地蔵さんは、良いことがあっても悪いことがあっても、いつも優しく見守ってくれる、この一貫性がおばさんにとってはお地蔵さん信仰の原点かもしれないね。

 

T:ありがとうございます。

なるほど、ですね。

欲求の階梯

H:「おれ、この世を去る前に一ミリでも世の中のためになることをしたいと思う」、これは凄いことですね。こういう欲求は腹が減ったから飯を食いたいという欲求とは全く次元の違う欲求なんだよ。

 

T:どんな風に違うの?

 

H:例えば腹が減ったから食いたい、っていう欲求は食べてしまえばその欲求なくなるが、時が経つと腹が減ってまた食べたいという欲求が生じる。このような欲求は一時的な欲求なんだ。アブラハム・マズローは、欲求は欠乏欲求と成長欲求に大別されると説明している。腹が減ったから食いたいという欲求は欠乏欲求になる。一方、世の中のためになることをしたいという欲求は、何か良いことをしたからといって、それで満足してその欲求は無くなってしまう訳ではなく、必要があればさらにまた良いことをしたいという、満たされて決して無くならずに継続する欲求である。これを成長欲求と言い、その欲求は継続すると考えられる。

 

もしA君に助けられた人がいたとしたら、その人はA君をお地蔵さんのように思い、また人のために1ミリでも良くなることをしたいと思う。人間はこの世を去っても、もし魂があるとすると、きっとその魂はあの世でもこの成長欲求は継続してお地蔵様のように日々働いて多くの子供たちを救うに違いない。このようにしてプラスの連鎖を生む、素晴らしいことですね。

 

 

でも、この世の中は、欠乏欲求に飢えた人達で満ち溢れている、少しでもA君のように成長欲求を持つ人が増えるといいなぁと思うよ。

リーダーはフォロワーの成長によって成果を上げる

 

お地蔵さんのように「無償の愛をしろ」と言っても、人間の世界では食っていかなくちゃいけないので、全く無報酬というのは難しい。でも、リーダーはフォロワーを道具としてあるいは自分の利益のためにこき使うと言うことは慎まなければならない。あくまでもリーダーは、フォロワーの成長を促すことに専念しながらフォロワーに成果を出してもらうことによって自分自身の成果を上げる、これこそリーダーの真骨頂と言える。お地蔵様をリーダーの鏡として見習いたいものである。

 

奴雁(どがん)

動物の世界でも、雁の群れには奴雁(どがん)というものがいて、皆が餌を食べている時にも食べずに常に周囲を見回し、危険を察知して仲間に知らせ群れの安全を保つ。ですから、人間社会においても、奴雁いない社会はリスキーである。

 

パーソナルパワーとポジションパワー

人には、パワーがあるのを知っている?

行動科学で言うパワーには、パーソナルパワーとポジションパワーの2つがある。

 

もし、そのおじさんから褒められたらすごく嬉しく感じるでしょう、逆にそのおじさんから叱られた場合には真剣に受け入れるでしょう。ところが、君のことを全然理解していない人間から褒められても嬉しくないし、叱られたら反発するよね。このようにそのおじさんは君に対して特別の影響力パワーを持っているんだよ、このようなパワーは、先生とか土地の有力者と言った地位に基づく影響力パワーではなく、その人個人的に備わるパワーなのでパーソナルパワーと言う。

 

T:色々な説明ありがとう御座います。リーダーシップとか「生き方リテラシー」、これからの人生に役立てたいと思います。

 



原文2

3.4リーダーシップの歴史

H:リーダーシップというと、これまでは偉い人が部下に対して号令をかけて何かをやらせること、と思われてきたかもしれないが、実はそうじゃないんだ。

 

いや、歴史的には確かにそういう時代はありました。封建時代には、領主は住民に対して他の土地に移動することを許さないし、職業も世襲制で親子代々同じ仕事をさせ自由に選ばせない、という枠の中で一方的に住民に納税などを強制しました。ところが、だんだん教育が浸透し民主的な社会になると、このような強圧的なリーダーシップは通用しなくなり、民主的なリーダーシップへと変質せざるを得なくなったのです。特に、1970年代のアメリカでは、ロバート・グリーンリーフによってなんとサーバントリーダーシップが提唱されるに至ったわけです。https://www.servantleader.jp/about/greenleaf

リーダーは、部下の困っていることをあたかもサーバントのように振舞って御用聞きして隘路打開することにより、部下の業績を向上させることに徹するものです。これまでとは真逆の発想ですね。でも、リーダーとは部下を通して成果をあげる人である、とも言われていることを考えると、これは理にかなったことです。

また、近年では、誰か指導者に従うのではなく、自分自身で課題を見つけて自分の成長を促すというセルフリーダーシップが網あづささんによって提唱されました。

 

T:そう言えば、最近は将棋界の藤井翔太とか、プロ野球界の大谷翔平とか言った若手の活躍が注目を浴びるようになりましたね。彼らは、最初のうちは指導者について技を磨いていたのでしょうが、ある程度行くと自分自身でコンピューター、AIなどの最新技術を駆使して学び成長するようになった、と聞きます。これなど、セルフリーダーシップの一例でしょうかね。

 

H:そうですね、近年は若くても、有名なブロガーとかユーチューバーが沢山輩出してきて大金を稼ぐ時代になりました。もう、経験豊かな年長者から何かを教わるという発想から、自らWeb情報を積極的に取りに行って新しい発想でビジネスを起こす、スタートアップ企業が続出する時代に突入しています。こう考えると、セルフリーダーシップがますます重要になって来ますね。

 

 

欲求の階梯

H:「おれ、この世を去る前に一ミリでも世の中のためになることをしたいと思う」、これは凄いことですね。こういう欲求は腹が減ったから飯を食いたいという欲求とは全く次元の違う欲求なんだよ。

 

T:どんな風に違うの?

 

H:例えば腹が減ったから食いたい、っていう欲求は食べてしまえばその欲求なくなるが、時が経つと腹が減ってまた食べたいという欲求が生じる。このような欲求は一時的な欲求なんだ。アブラハム・マズローは、欲求は欠乏欲求と成長欲求に大別されると説明している。腹が減ったから食いたいという欲求は欠乏欲求になる。一方、世の中のためになることをしたいという欲求は、何か良いことをしたからといって、それで満足してその欲求は無くなってしまう訳ではなく、必要があればさらにまた良いことをしたいという、満たされて決して無くならずに継続する欲求である。これを成長欲求と言い、その欲求は継続すると考えられる。

 

もしA君に助けられた人がいたとしたら、その人はA君をお地蔵さんのように思い、また人のために1ミリでも良くなることをしたいと思う。人間はこの世を去っても、もし魂があるとすると、きっとその魂はあの世でもこの成長欲求は継続してお地蔵様のように日々働いて多くの子供たちを救うに違いない。このようにしてプラスの連鎖を生む、素晴らしいことですね。

 

でも、この世の中は、欠乏欲求に飢えた人達で満ち溢れている、少しでもA君のように成長欲求を持つ人が増えるといいなぁと思うよ。

丹下健三と岡本太郎とのこの逸話は、知りませんでした。。。

リカレント教育

日本はこの20年賃金が上がっていないが、海外では同じ仕事を1/10の賃金で働く国が多数あります。同一労働、同一賃金は国内に限ったことではなく、世界的規模で言えることです。ですから、海外で1/10の賃金で出来る仕事は、国内でも1/10の賃金で働くのが理屈的には適っています。ところが、現実には最低賃金制度があり1/10の賃金で働かせることは出来ないので、海外に仕事を持っていき空洞化が起きるのは当然のこと。対策として、海外より10倍の賃金を得ようと思えば、10倍の付加価値を持った仕事が出来るように労働の質を高めなければならない。先進国では社会人が大学に戻って最新の技術を学びなおす、リカレント教育が盛んですが、日本でもそのような傾向は出てくること間違いなしです。

定年になってから、あるいはその直前に次の仕事を始めるのではもう遅い、ドラッカーが言うように、若い時から会社に勤めながらNPO活動に参加して新しい人脈やスキルを獲得するなど助走する必要がある。

リーダーはフォロワーの成長によって成果を上げる

お地蔵さんのように「無償の愛をしろ」と言っても、人間の世界では食っていかなくちゃいけないので、全く無報酬というのは難しい。でも、リーダーはフォロワーを道具としてあるいは自分の利益のためにこき使うと言うことは慎まなければならない。あくまでもリーダーは、フォロワーの成長を促すことに専念しながらフォロワーに成果を出してもらうことによって自分自身の成果を上げる、これこそリーダーの真骨頂と言える。お地蔵様をリーダーの鏡として見習いたいものである。

 

 

 

改定文2

3.4リーダーシップの歴史

H:リーダーシップというと、これまでは偉い人が部下に対して号令をかけて何かをやらせること、と思われてきたかもしれないが、実はそうじゃないんだ。

 

いや、歴史的には確かにそういう時代はありました。封建時代には、領主は住民に対して他の土地に移動することを許さないし、職業も世襲制で親子代々同じ仕事をさせ自由に選ばせない、という枠の中で一方的に住民に納税などを強制しました。ところが、だんだん教育が浸透し民主的な社会になると、このような強圧的なリーダーシップは通用しなくなり、民主的なリーダーシップへと変質せざるを得なくなったのです。特に、1970年代のアメリカでは、ロバート・グリーンリーフによってなんとサーバントリーダーシップが提唱されるに至ったわけです。https://www.servantleader.jp/about/greenleaf

リーダーは、部下の困っていることをあたかもサーバントのように振舞って御用聞きして隘路打開することにより、部下の業績を向上させることに徹するものです。これまでとは真逆の発想ですね。でも、リーダーとは部下を通して成果をあげる人である、とも言われていることを考えると、これは理にかなったことです。

また、近年では、誰か指導者に従うのではなく、自分自身で課題を見つけて自分の成長を促すというセルフリーダーシップが網あづささんによって提唱されました。

 

T:そう言えば、最近は将棋界の藤井翔太とか、プロ野球界の大谷翔平とか言った若手の活躍が注目を浴びるようになりましたね。彼らは、最初のうちは指導者について技を磨いていたのでしょうが、ある程度行くと自分自身でコンピューター、AIなどの最新技術を駆使して学び成長するようになった、と聞きます。これなど、セルフリーダーシップの一例でしょうかね。

 

H:そうですね、近年は若くても、有名なブロガーとかユーチューバーが沢山輩出してきて大金を稼ぐ時代になりました。もう、経験豊かな年長者から何かを教わるという発想から、自らWeb情報を積極的に取りに行って新しい発想でビジネスを起こす、スタートアップ企業が続出する時代に突入しています。こう考えると、セルフリーダーシップがますます重要になって来ますね。

 

 



原文3 

有事のリーダーシップと平時のリーダーシップ

「例外の無い規則は無い」、というように、これも状況次第である。例えば火事の時はどうであろうか、フォロワーの成長などと言っていられない。リーダーは、火を消すか、逃げるか、迷わずに号令を下して従わせなければいけない。もし、命令に従わないフォロワーがいたとしたら、張り倒してでも従わせることが重要である、それがそのフォロワーのためであり、また多くの人々のためでもあるからであるから、この点は注意しなければいけない。ところで、この場合のリーダーとは職制上の上司である必要はない。最初に火事に気付いた人間が叫んで行動を起せば良く、その人がこの場合のリーダーと言える。有事のリーダーは、必ずしも平時のリーダーシップとは限らない。

正常性バイアス

 

緊急の場合と言えば、アメリカでの同時多発テロ911の時、階により助かった階とそうじゃない階があった。異常事態が起きたとき、人間は「正常性バイアス」と言って異変に気付いても、敢えてそれを正常であろうとする心理が働く。この正常性バイアスを打ち破る人が一人でもいて逃げる行動を起せば、他の人々もそれに従い逃げることが出来る。ところが、皆が正常性バイアスのままだと全員逃げ遅れる。最初に行動を起こすのは、指導的立場にある人か否かには関係ない。誰かひとりでもいいから正常性バイアスを破り行動を起こす人間がひとりいるか否かで、その階の人々が救われるか否かが決定された。最初に行動を起こした人は、多くの人々の命を救った人は立派なリーダーシップを発揮したと言える。

 

奴雁(どがん)

動物の世界でも、雁の群れには奴雁(どがん)というものがいて、皆が餌を食べている時にも食べずに常に周囲を見回し、危険を察知して仲間に知らせ群れの安全を保つ。ですから、人間社会においても、奴雁いない社会はリスキーである。

 

パーソナルパワーとポジションパワー

人には、パワーがあるのを知っている?

行動科学で言うパワーには、パーソナルパワーとポジションパワーの2つがある。

もし、そのおじさんから褒められたらすごく嬉しく感じるでしょう、逆にそのおじさんから叱られた場合には真剣に受け入れるでしょう。ところが、君のことを全然理解していない人間から褒められても嬉しくないし、叱られたら反発するよね。このようにそのおじさんは君に対して特別の影響力パワーを持っているんだよ、このようなパワーは、先生とか土地の有力者と言った地位に基づく影響力パワーではなく、その人個人的に備わるパワーなのでパーソナルパワーと言う。

 

 

 

 

 

生き方リテラシー

T:リーダーシップっていうのは奥深いんですね

H:そうですよ、だからこういうことを知らずに、なんとなく勘と経験で行き当たりばったりで一生を送ることは、大きなチャンスを逃がしたり、危険を回避できずに災難に遭うなど非常にもったいないことだよ。少しでも人生を豊かに送るための生き方を学ばなければいけない。これが「生き方リテラシー」なんだ。

 

 

 

T:色々な説明ありがとう御座います。リーダーシップとか「生き方リテラシー」、これからの人生に役立てたいと思います。

 

ー完ー

 

 

改定文3